パニック症は珍しい病気じゃない ~受診を迷っているかたへ~

パニック症全般

こんにちは、パニック症になったカウンセラーpanicoです。

パニック発作を経験すると、「珍しい病気になってしまった」「どうして自分が」と、悲観するかたも多いと思います。私もそうでしたし、受診して診断を受けるのがとても不安でした。

「パニック」という言葉のイメージから「混乱している」と想像されてしまったり、そもそもこころの病気になったことをオープンにする人が少ないからか、この病気は世間的にまだまだ正しく理解されていません。受診せず診断を受けないまま、ひとりで症状と闘っているかたも多いのではないかと思います。

しかし、パニック症は世界的にみて珍しい病気ではありません。今回は、パニック症の疫学的特徴についてまとめてみました。

どのくらいの人がパニック症になっているの?

欧米では、若者から成人にかけてのパニック症の1年間の有病率は約2〜3%、生涯では3.5%に達すると報告されています。一方、日本で行われた世界保健機関(WHO)の調査では、1年間の有病率は0.5%と、欧米に比べてかなり低い傾向が見られました。

これは、欧米に比べて日本の罹患率が少ないというわけではなく、日本人の受診率が低いからなのだそうです。パニック症のなりやすさは世界全体をみても差がないとされています。受診していない人も含めると、日本では100人に2人~3人、つまりクラスに1人くらいの割合でパニック症を患う人がいる、ということになります。

有病率2~3%というのは、「比較的まれではないが、一般的すぎもしない」中間的な頻度の病気という位置づけになります。ほかに有病率2~3%の主な病気としては、睡眠障害、過敏性腸症候群、成人のアトピー性皮膚炎、女性の骨粗しょう症、緑内障などがあります。

日本の人口と有病率で計算すると、日本全国で推定60万人前後の患者さんがいる計算になります。60万人とはどんな数字でしょうか、AIの力を借りて調べてみたところ以下のとおりになりました。

  • 東京ドーム公演11回分
  • 明治神宮の元旦の午前中に訪れる人の数
  • フジロックフェス2回分
  • 東京ディズニーランド&シーの12日分の来園者数
  • 山手線の5時間分の乗客者数
  • 日本の高校1年生全員

全年齢に発症しうる

アメリカのデータによると、発症年齢の中心は20〜24歳。14歳未満での発症はまれで、45歳以降になるとさらに少なくなるそうです。

日本においての発症年齢は、男性で25~30歳前後、女性で20~35歳前後が多くなっています。10代後半から発症するケースも増加傾向にあり、高校生~大学生世代の報告が増えています。65歳以上での発症はまれとされていますが、60歳前後での発症例もあります。

男女ともに発症する

女性は男性の約2倍の割合でパニック障害にかかりやすいとされています。

日本の人口をもとに、現在罹患している人数を試算したところ、男性で21万人、女性だと41万人もの人々がパニック症に罹患していると推定されます。

周りにパニック症になったという方は少なくても、全国的にみるとかなりの数いるということになります。

他の病気と併発していることも

パニック症の患者さんの約91%は、何らかの他の精神疾患を併発しているという報告があります。

まず、こころの病気との併発としてよく見られるのは以下のような病気です。

  • 広場恐怖症(AG) 
    ※広場恐怖はパニック症の症状の一つですが、分けて診断されることがあります。
  • 社会不安障害(SAD)
  • 限局性恐怖症
  • 全般性不安障害(GAD)
  • 分離不安症
  • うつ病、双極性障害などの気分障害
  • アルコール使用障害などの物質関連障害
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)
  • OCD(強迫性障害)
  • 病気不安症(病気への過度な不安)

特にうつ病との関係は深く、パニック症の患者さんの約2/3は、発症と同時またはその後にうつ病を経験しているとされます。残りの1/3は、うつ病が先に起こり、その後にパニック症が発症するケースです。

また、以下の身体的な症状や病気とも併発しやすいことが知られています。

  • めまい
  • 不整脈
  • 甲状腺機能亢進症
  • 喘息
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 過敏性腸症候群(IBS)

併発しやすい身体の病気は、別記事でも挙げていますので、よろしければお読みください

パニック症は珍しい病気ではありません。早めの受診・治療を!

突然のパニック発作に動揺し、ネットでたくさん調べて調べて、パニック症かもしれないとわかったけれど、受診をためらい適切な治療を受けないまま、どんどん悪化して苦しくなっていく・・・。こんな悪循環になるとつらいですね。

ただ、治療を受けても必ずしも良くなるというものでもないようで、
治療を続けた場合の6〜10年後の経過は

A:症状がほぼ消えて健康な状態 約30%

B:改善はしているが症状が残っている 約40〜50%

C:あまり変化がない、または悪化している 約20〜30%

という報告があります。

こうしてデータだけをみると、「変化がない、または悪化している」という人も案外多く、「治療しても意味がないのでは」と虚しく方もいるかもしれません。

これについて私自身の考えをお伝えすると、パニックの世界にいちど足を踏み入れてしまったら、パニックがなかったころの自分に完全に戻ることはないと思っていて。ある時期に治ったと思えたとしても、また症状が出る可能性は残り続けるような気がしています。つまり、完全に治ったと自信をもって言える日は、私の場合来ないのではないかと、そう思っています。

例えば、治療が功を奏して、発症の3年後には症状を思い出すことなく生活できているとします。このときに「経過はどうですか」とインタビューをうけたら「A」と答えると思います。しかし、1年後にずっと避けていた苦手な状況(虫歯になって歯医者に行くことになった等)に出くわし、症状のことを思い出して不安になってしまったとして、そのとき再度インタビューをうけると「B」か「C」と答えると思うのです。

こころの病気はスペクトラム的(病気と健康の明確な境目がない)ので、私の場合はパニック症を「治った」「治らない」で判断するのではなく、生涯通して調子が上がったり下がったりしながら、根気強く付き合っていくものだと考えています。

いま病院を受診するか迷っているかたは、調査データをあまり悲観的にとらえすぎず、「パニック症は決して珍しい病気ではない」「日本にも世界にも、男女ともに、全年齢で同じ症状と闘っている仲間がいる」ととらえて、ぜひ適切な治療につながってほしいと思います。応援しています。

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