パニックを語るにあたって、panico的にハッキリさせておきたいのが
「パニック障害」と「パニック症」どっちなんだい。
検索するとどちらも多くヒットするし、
このサイトではどれを使うのか、決めておきたくて。(一応カウンセラーなので)
私の学生時代は「障害」で習ったのに、今なぜ「症」もでてきているのか。
👉結論から先に言うと「どっちでもええんやで」!!!
ですが私は「症」のほうをこれから使うようにします。
理由は以下に説明していきますね。
英語での診断名は「Panic Disorder」

最新の国際的な診断基準 DSM-5-TR、ICD-11には、
パニック障害/症について以下のように記載されています。
『Panic Disorder』
ちなみに
・DSMはアメリカ精神医学会が作成した「精神疾患の診断・統計マニュアル」
・ICDはWHOが作成した「国際疾病分類」
👉英語名では「障害」or「症」の部分については「disorder」で統一されています。
どうやら「disorder」をどのように日本語訳するかがポイントのようですね。
「障害」と「症」はどちらも正しい
📝Yahoo!検索で「disorder」と検索したところ、「障害」がヒットしました。

「他14件の翻訳」として、無秩序、異常、疾病、症、混乱、病、不調、乱雑、狂い、乱脈、狼藉、猥雑、紛糾、不同、という意味があるとのこと。
👉翻訳すると、「障害」も「症」もどちらも正しいことがわかりました。
そして、2つの意味だけでなく、いろいろな言葉が出てきました。
日本語にはdisorderにぴったり対応している概念がないのかもしれません。
「disorder」の語源
ここで、disorderの成り立ちをみてみましょう。
dis-(ラテン語起源)
→ 「離れて」「否定」「逆」「欠如」を表す接頭辞
order(ラテン語 ordo = 「順序」「秩序」)
→ 秩序・整列・規則・正常な状態
➡ dis + order = 「秩序を欠いた状態」「乱れ」
例文:The room was in disorder.(部屋が散らかっていた/無秩序な状態だった)
👉なるほど、もともとは「無秩序」「混乱」といった意味合いが濃いみたいですね。
しっくり選手権!(やはり「障害」か「症」だな)
試しに、調べたdisorderの15種類の日本語訳のあたまに「パニック」をつけて、
どれがしっくりくるのか選手権を開催してみました。
⭐第1回 パニック診断名しっくり選手権⭐
今回エントリーのみなさまはこちら↓
障害、無秩序、異常、疾病、症、混乱、病、不調、乱雑、狂い、乱脈、狼藉、猥雑、紛糾、不同
🏅結果🏅(×、△、〇、◎の4段階でpanico独自の評価による)
×論外
「パニック異常」「パニック乱雑」「パニック狂い」「パニック乱脈」
「パニック狼藉」「パニック猥雑」「パニック紛糾」「パニック不同」
→異常や狂いとか、頭おかしい人みたいで、人の状態を表す言葉としては適さないね。
他も意味よくわからないしね。
△低評価
「パニック無秩序」
→語源に近いからいいんだけど、長い。「無秩序」がカミカミになって言いにくい。
「私パニック無秩序なんだよね~」とか変だしね。
「パニック疾病」
→まずまずかな~。
〇まぁまぁ良い
「パニック混乱」
→混乱している感じが直に伝わってきて、パニック症状をよく表していると思うのだけど、
パニックと混乱で意味が重複してる感じがする。
「パニック病」
→シンプルで悪くないね。でも人によっては嫌な感じがするかも。
「パニック不調」
→悪くないね。でも一時的なイメージが強くなる。しんどいときは深刻さが伝わりにくいかな。
◎高評価
「パニック障害」
→うん、聞き慣れていて、すんなり。社会生活に支障をきたしている感じ。
「パニック症」
→いいね!言いやすさもあるし、「障害」とも「病」とも違ったイメージ。
軽度も重度も、いろんな状態を含んでいる感じ。
👉やはり、診断名を表す言葉としては「障害」か「症」がしっくりくるという結果になりました。
個人的には、「パニック」においては、「障害」でも「症」でもどちらでもよい感じがします。
ですが、「障害」か「症」か論争をめぐっては、医学界が長年にわたって議論と検討を重ね、
時代に合わせて更新してくださっていることがわかりました!
診断名が変わっていってる!

心の病気は、前述のアメリカ精神医学会のDSM、WHOのICDの基準によって診断されています。
このDSMやICDは、医学の進歩とともにアップデートを繰り返しているので、
新しいのが出る→日本語訳する→改訂版が出る→日本語訳する・・・の繰り返しなんですね。
例えばDSMでいうと、panicoが勉強した当時「DSM-4-TR」というバージョンで(年代がばれるね)、
このときパニックの診断名は「パニック障害」と表記されていました。
今回最新版のDSM-5-TRを見てみたところ、「パニック症」と表記されています!
その前のバージョンのDSM-5を見たら「パニック症/パニック障害」併記があります。
え、この20年数年の間に何があったの?
整理すると
2000年~ DSM-4-TR 「パニック障害」
2013年~ DSM-5 「パニック症/パニック障害」
2022年~ DSM-5-TR 「パニック症」
最新の診断名は「パニック症」
長らく、disorderは障害と訳されてきました。これは間違いではありません。
しかしDSM-5の日本語版の作成にあたり、
・disorder の「障害」と,disability の「障害(碍)」は混同されがちである
・病気の名前に「障害」という言葉を使うとショックを受ける方が多い
・「障害」という言葉は「治らない状態」という誤解を招くおそれがある
という理由などから、「症」に変える方がよいという意見が出てきたんですって。
ただ、「症」とすると過剰診断の可能性もあるという意見もあって、
最終的に「子どもの病気」や「不安症など一部の病気」に限って「症」に変更することに。
でも、急に変えると混乱するので、しばらくは「障害」を併記することになったのですね。
で、2022年に次のバージョンのDSM-5-TRが出たときに『しばらく併記する期間』は終えて、
パニックに関しては「パニック症」が正式な診断名となったわけなんですね。
結論:一般的にはどちらでもよいのでは
上述の経過を経て、現在の診断名は「パニック症」となっているようです。
ですが、実際の診療場面においては、診断書などにも「パニック障害」と記載されてことも多くありますし、一般的には「障害」が先に浸透していて、多くの人が聞き慣れているのだと思います。
今は過渡期で、今後時間をかけて「症」が定着していくのでしょう。
「障害」も「症」もどちらもdisorderの訳としては間違ってないのだから、
専門の医学界隈の人でなければ、どちらが正しいとか関係なく、
同じ概念を表す用語として、一緒にパニックのことを考えていけたらと思います。
panicoは一応臨床心理学を勉強した者として、
最新のDSMの表記に従って、「パニック症」と記載するようにいたしますね。
(ここで疑問に思ったのですが、パニックを日本語訳しなかったのはどうしてなんだろうね。)
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