日々の暮らしの中で、コーヒーや紅茶、チョコレートなどに含まれる「カフェイン」は、私たちにちょっとした元気や集中力を与えてくれる存在です。でも、パニック症(パニック障害)を抱えるかたにとっては、その刺激が思わぬ不安や発作を引き起こすことがあるのです。
panicoは、コーヒーが大好きだったのですが、カフェインの影響について知ってからコーヒーをすっぱりやめました。最初は楽しみが減ってしまって残念でしたが、今はコーヒーの代わりに色々な飲物を楽しんでいます。
この記事では、カフェインがパニック症に与える影響について解説します。
カフェインが脳に与える影響

カフェインは「アデノシン」の働きをブロックする
カフェインは、脳内の「アデノシン」という神経伝達物質の働きをブロックします。アデノシンは、神経の興奮を鎮め、リラックスや眠気を促す役割を持っています。
この働きが阻害されると、脳は興奮状態になり、ノルアドレナリンやドーパミンなどの刺激物質が過剰に分泌されます。これにより、心拍数が上がったり、呼吸が浅くなったり、身体が緊張状態に入ります。
こうした反応は、健康な人にとっては「ちょっと目が覚めた」「集中できる」と感じる程度かもしれません。しかし、パニック症の方にとっては、この身体の変化が“危険信号”として認識されやすく、実際にパニック発作を引き起こす可能性があるのです。
カフェインをとると パニック発作に似た身体反応が
カフェインは交感神経を刺激し、身体を緊張状態に導きます。これにより、以下のような症状が現れることがあります。
- 心拍数の上昇・動悸
- 呼吸の浅さ・速さ
- 手の震え・発汗
- 血圧の上昇
これらは、パニック発作の典型的な身体症状と非常に似ているため、脳が「危険」と誤認し、実際に発作を引き起こすことがあるのです。
研究結果からみるパニック症とカフェインの関係

スウェーデンのウプサラ大学による研究では、パニック症患者に対してカフェインを摂取させた際の反応を調査しました。
- 対象:237人のパニック症患者
- 結果:約51.1%がカフェイン摂取後パニック発作を経験
「健康な人」では、発作率はわずか1.7% - 使用されたカフェイン量は約480mg(コーヒー約5杯分)
- 結論:パニック症のある人は、健康な人よりもカフェインに対して極めて敏感であることが確認された。この研究は、カフェインがパニック症の病態生理に関与する可能性を示唆しており、用量反応関係(摂取量と症状の強さの関係)も今後の研究課題とされている。
参考:Klevebrant& Frick 「パニック障害患者における不安とパニック発作に対するカフェインの効果」General Hospital Psychiatry, 2022
また、アメリカ精神医学会の診断基準「DSM-5」には、**「カフェイン誘発性不安障害」**という正式な診断名が存在しており、医学的にもその影響が認められています。
カフェインを含む食品
カフェインはコーヒーだけでなく、さまざまな食品や飲料に含まれています。
| 飲み物 | コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、エナジードリンク、コーラなど |
| 食品 | チョコレート、ココア、一部のスイーツ |
| 医薬品 | 一部の鎮痛剤、風邪薬、眠気覚まし薬など |
「無意識に摂ってしまう」ことが多いため、パニック症の方は成分表示を確認する習慣をつけると安心です。
カフェインの代わりに

カフェインを控えることで、心の安定を保ちやすくなります。代わりに、以下のような飲み物や習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか?
ノンカフェイン飲料の例
- ハーブティー(カモミール、レモンバーム、パッションフラワーなど)
- 麦茶、ルイボスティー
- デカフェ(カフェイン除去)コーヒーや紅茶
心を落ち着ける習慣
- 深呼吸や瞑想
- 自然の中で過ごす時間
- ゆったりとした音楽やアロマ
まとめ:こころと身体に優しい選択を
コーヒーなど、カフェインを含むものは、美味しくて手軽なので、楽しみのひとつとして生活に取り入れているかたも多いと思います。ただ、パニック症との関連が研究でも明らかになっている通り、身体への影響を考えると、減らしたり距離を置いたりすることも、自分を守る優しさのひとつです。
「カフェインがないとストレスがたまってしまってかえって良くない」という方は、無理して断つ必要はないかと思いますが、私のように「パニック症が良くなるためなら何でもやってみたい」というモードのときは、思い切ってやめてみてもよいかもしれませんね。
パニック症と向き合う日々の中で、「何を摂るか」「どう過ごすか」は、心の安心に直結します。自分の感覚を信じて、穏やかな選択を重ねていきましょう。




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